子どもの嘔吐について

子どもの嘔吐は、日常的によくみられる症状のひとつで、多くの場合は一時的なもので自然に回復します。嘔吐は、体に取り込まれたウイルスや細菌、不要な物質を排出しようとする生理的な防御反応であり、必ずしも重症のサインとは限りません。しかし、嘔吐の背景にはさまざまな原因があり、その見極めがとても重要です。最も多い原因はウイルス性胃腸炎で、突然の嘔吐から始まり、下痢や発熱を伴うことがあります。ほかにも、風邪の一症状として喉の炎症から吐いてしまうことや、強い咳・泣きすぎによる嘔吐もよく見られます。また、乳幼児では食べすぎ、ミルクの飲みすぎ、体調不良による一時的な嘔吐も珍しくありません。
一方で、嘔吐は病気の初期サインとして現れることもあります。肺炎、尿路感染症、虫垂炎、髄膜炎などの全身の病気が隠れていることがあり、発熱の程度、ぐったりしていないか、腹痛の有無など、全身状態の確認がとても大切です。繰り返す嘔吐や水分が取れない状態が続くと脱水症状につながり、特に小さな子どもでは急速に進行することがあります。尿の量が減る、口の中が乾く、涙が出ないなどのサインがあれば注意が必要です。
嘔吐したらここをチェック
嘔吐した回数と間隔
嘔吐が1回だけなのか、短時間に何度も繰り返すのかで緊急性が変わります。数回で落ち着く場合は様子見でもよいことが多いですが、30分おきに何度も吐く、数時間止まらないといった場合は脱水のリスクが高まります。嘔吐の時間、量、頻度を記録しておくと受診時に役立ちます。
吐いたものの状態
食べたものがそのまま出てくるのか、透明や黄色の胃液が出るのか、血が混じっているかなどを確認します。血が混じる場合は胃粘膜が強く傷ついている可能性があり、早めの受診が必要です。緑色の液体(胆汁)が出ている場合は腸閉塞などの緊急性の高い疾患も疑われます。
発熱・下痢などほかの症状
嘔吐とともに発熱、下痢、腹痛、咳、頭痛などがあると、胃腸炎や全身の感染症、あるいは他の病気の可能性があります。症状が複数ある場合は、嘔吐がどの病気の一部なのか判断する材料になるため、全身状態を丁寧に観察することが大切です。
水分のとれる量
嘔吐後に水分が取れるかどうかは非常に重要です。一口飲むたびに吐いてしまう場合や、まったく飲めない場合は脱水が進行しやすく、医療機関でのケアが必要になることがあります。少しずつ時間を空けて与え、飲んだ直後の様子を確認しましょう
お子さまの元気・機嫌
吐いた直後でも元気がある場合は比較的軽症のことが多いですが、ぐったりしている、目の焦点が合わない、泣かないなどの様子がある場合は注意が必要です。特に乳児は症状の変化が分かりづらいため、小さな変化にも気づいてあげることが大切です。
嘔吐したときの家庭内でのケア方法
まずは安静にして休ませる
嘔吐直後は胃が敏感になっているため、無理に水分や食事をとらせず安静が必要です。抱っこや横向きに寝かせて、吐いた物が気道に詰まらないように配慮しましょう。しばらく落ち着くまで静かに休ませることで、嘔吐の回数が少なくなることもあります。
水分補給は少量ずつゆっくり
吐いてすぐに大量の水を飲ませると、再び吐いてしまうことが多くあります。10〜20分ほど時間をあけ、少量の水や経口補水液をスプーン1杯程度から始めるのがポイントです。少しずつ与えて、嘔吐がなければ量を増やし、こまめな補給を続けましょう。
食事は無理に与えない
無理に食べさせると再度嘔吐の原因になることがあります。半日〜1日ほどは無理に食べなくても大丈夫です。食欲が戻ってきたら、おかゆ、うどん、バナナなど消化に良いものから再開しましょう。脂っぽい食品、乳製品、刺激物は回復してからにしましょう。
衛生管理を徹底する
嘔吐物にはウイルスが含まれていることが多く、感染が広がりやすい状態です。手袋やマスクを使い、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤を薄めたもの)で周囲を消毒しましょう。汚れた衣類はすぐに洗い、換気も行うことで家庭内感染を予防できます。
こまめに体調を観察する
嘔吐が治まった後も、尿の量、発熱の有無、機嫌などを日中こまめに観察しましょう。嘔吐の回数が減ってきても、脱水や感染症が進行している可能性があります。特に乳児は急に悪化することがあるため、慎重な経過観察が大切です。
嘔吐したときの受診タイミング
水分が全くとれないとき
少量ずつ与えてもすぐに吐いてしまう、数時間まったく水分が取れない場合は脱水の危険があります。舌や口の乾燥、尿が減るといったサインが見られたら、速やかに医療機関を受診してください。
嘔吐が何度も続くとき
短時間に何度も嘔吐を繰り返す、6〜8時間経っても症状が治まらない場合は注意が必要です。胃腸炎だけでなく、腸閉塞や全身の感染症が隠れている可能性があります。特にぐったりしているときは早めに受診を。
高熱や強い腹痛を伴うとき
嘔吐とともに高熱、激しい腹痛、血便などの症状がある場合は、重症化のサインです。虫垂炎や腸重積などの可能性もあり、早期の診断と治療が必要です。痛みで立てない、うずくまるなどの様子があれば緊急性が高くなります。
血や緑色の液体を吐いたとき
嘔吐物に血が混じる、または緑色(胆汁)の液体を吐く場合は、胃や腸の状態に重大な異常がある可能性があります。これは緊急受診が必要なサインで、時間を置かず病院へ向かってください。
元気がなくぐったりしているとき
目の焦点が合わない、反応が鈍い、抱っこしてもぐったりしている場合は危険信号です。体力が急激に低下していることがあり、脱水や重い感染症の可能性があります。夜間でも救急受診を検討してください。
大田区、目黒区、東急目黒線沿い(田園調布、奥沢、大岡山、洗足、西小山、武蔵小山など)、東急大井町線沿い(自由が丘、緑が丘、大岡山、旗の台など)で、子どもの嘔吐の診察をご希望方はぜひ一度、大岡山こどもアレルギークリニックへご相談ください。
