アトピー性皮膚炎の新しい治療「イブグリース」について

イブグリースとは
イブグリース®(一般名:レブリキズマブ)は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対する新しい注射薬(生物学的製剤)です。
これまでの外用薬(ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏など)や内服治療を続けても症状のコントロールが難しい方に対して、炎症の根本に関わる免疫反応を抑えることで、皮膚の赤み・かゆみ・乾燥などを改善します。
アトピー性皮膚炎は、慢性的な炎症と皮膚のバリア機能の低下が原因で、症状を繰り返すのが特徴です。イブグリースは、その炎症に関与する「IL-13」というサイトカインの働きを選択的に抑えることで、かゆみや炎症を内側から抑制し、皮膚状態を整えることが期待されます。
イブグリースの作用機序
アトピー性皮膚炎の患者さんは、免疫バランスが乱れIL-4やIL-13という物質が過剰に働くことで、炎症・かゆみ・皮膚バリアの破綻が引き起こされます。
イブグリースはそのうちIL-13の作用を特異的に阻害する抗体医薬で、炎症の鎮静化に重点を置いた薬剤です。
従来の生物学的製剤「デュピクセント®(デュピルマブ)」はIL-4とIL-13の両方に働きかける一方で、イブグリースはIL-13に特化した分子設計が特徴です。これにより、より精密な炎症コントロールと副作用の軽減が期待されています。
また、臨床試験では、投与後16週の時点で皮膚症状の改善と強いかゆみの軽減が多くの方で確認されています。皮膚の保湿機能も改善することから、「外用薬が以前よりも効きやすくなった」と感じる方も少なくありません。

治療の対象となる方
イブグリースは、以下のような方に適しています。
- 12歳以上で、体重が40kg以上の方
- アトピー性皮膚炎が中等症~重症に分類される方
- ステロイド外用剤や免疫抑制外用剤を使用しても症状が十分に改善しない方
- かゆみが強く、睡眠や日常生活に支障を感じている方
- 他の生物学的製剤(デュピクセント®など)を使用して効果が十分でなかった方
初診時には、これまでの治療歴や現在の皮膚状態を丁寧に確認し、イブグリースが適しているかどうかを総合的に判断します。
また、治療の目的・効果・副作用について十分にご説明し、患者さんと相談しながら導入を決定します。
投与方法とスケジュール

イブグリースは皮下注射によって投与します。
初期投与(導入期)と維持期でスケジュールが異なります。
- 初回および2回目(導入期):500mg(250mg注射器×2本)を2週間間隔で投与
- 3回目以降(維持期):250mg(1本)を2週間ごとに投与
- 症状の安定を確認した場合、4週間ごとの投与に変更することも可能です
当院では、初回と2回目は院内で医師が投与し、注射後の体調観察を行います。
自己注射のトレーニングを受けた後、ご自宅でご自身またはご家族による投与が可能になる場合もあります。
(自己注射の可否は患者さんの状態や希望に応じて医師が判断します。)
治療効果と期待できる変化
イブグリースによって期待される効果は以下の通りです。
- 強いかゆみの軽減
- 皮膚の赤み・湿疹・かさつきの改善
- 炎症の再発頻度の低下
- 皮膚バリア機能の回復
- 外用薬の使用量の減少
症状が落ち着くことで睡眠の質が向上し、生活のストレスも軽減される方が多いです。
効果のあらわれ方には個人差がありますが、おおむね投与開始から4〜8週間で改善を実感される方が多いと報告されています。
副作用・注意点
生物学的製剤は全身に作用するため、使用にあたっては注意が必要です。
主な副作用には次のようなものがあります。
- 注射部位の痛み・発赤・腫れ・かゆみ
- 結膜炎・アレルギー性結膜炎などの目の症状
- 上気道感染(風邪のような症状)
- 頭痛・倦怠感
重篤な副作用はまれですが、投与後に異常を感じた場合はすぐに医師へご相談ください。
また、寄生虫感染症の既往がある方や妊娠・授乳中の方は使用前に医師への申告が必要です。
イブグリース使用中は生ワクチンの接種が制限されることもありますので、ワクチン接種予定がある方は事前にご相談ください。
他の治療との違い
イブグリースは外用薬や内服薬と併用することが可能であり、既存治療を補う新しい選択肢です。
特に「外用剤で症状を抑えきれない」「かゆみが夜も続く」「薬の副作用が心配」といった方に適しています。
治療を中止した場合でも、比較的ゆるやかに薬の効果が消失するため、安全性にも配慮された設計となっています。
当院での治療の流れ
- 初診・相談:症状・治療歴・ご希望を確認し、イブグリースの適応を判断
- 導入前検査:必要に応じて血液検査などを実施
- 初回投与(院内):医師立ち会いのもと安全に実施
- 経過観察:2回目投与までの反応を確認し、効果・副作用を評価
- 維持期治療:定期的に通院しながら投与を継続。自己注射を導入する場合もあり
治療を続けるうちに皮膚の状態が改善し、外用薬の使用回数や強さを減らせるケースもあります。
再燃を防ぐためにも、スキンケア・保湿の継続が非常に重要です。
イブグリースは、これまでの治療で十分な効果が得られなかったアトピー性皮膚炎に対して、症状の根本に働きかける新しい治療薬です。
効果と安全性のバランスが良く、長期的なコントロールを目指すことができます。
大田区、目黒区、東急目黒線沿い(田園調布、奥沢、大岡山、洗足、西小山、武蔵小山など)、東急大井町線沿い(自由が丘、緑が丘、大岡山、旗の台など)でアトピー性皮膚炎の診察をご希望方はぜひ一度、大岡山こどもアレルギークリニックへご相談ください。
